導入直後はそう感じました。議事録の要約も、メールの下書きも、AIに任せれば速い。
ところが数週間後、確認・修正に追われている自分に気づきます。
気づけば、AIの出力を直す時間が、以前の作業時間とほとんど変わらなくなっていました。
つまり、AIの出力には「正しいかどうかを人間が判断する」コストが常に発生します。
このコストを設計せずに導入すると、速くなった作業の裏で、確認負荷が積み上がっていきます。
しかしこれは、まだ「見えやすい問題」です。本当に怖いのは、もっと先にあります。
「目的なき導入は、必ず失敗する」——ERP・クラウド・DXと、半世紀のIT投資が繰り返し証明してきた大原則です。AIもその例外ではありません。
※ ただし、目的を明確にしたうえで導入した企業でさえ、気づかないうちに陥る問題があります。
確認コストや品質の問題は、運用ルールを整えれば対処できます。しかし次に起きることは、数値では見えません。
「何のために使うか」を明確にしてAIを導入した場合、確かに時間は生まれます。繰り返しの文書作成、定型的なメール——こうした作業の時間が減るのは事実です。これが第一段階の成功です。
しかし「生まれた時間で何をするか」を決めていないと、空いた時間は次のこなし仕事で埋まります。
AIは質を変える道具ですが、変化の方向は決まっていません。
向上するか劣化するかは、あなたが「何を守り、何を委ねるか」を自分で決められるかどうかにかかっています。
道具を入れることと、道具を使いこなすことは——まったく別の話です。でもその問いに気づいた時点で、あなたはもう一歩先にいます。